業種/和食店

所在地/東京都麻布十番

都心の懐で蘇る
時代を超えた静寂の隠れ家

東京タワーを望む麻布十番の静寂な住宅街。
緑あふれる広大な日本庭園内に「ばんげ」はできました。

この地は、高松の名門旅館「花樹海」が運営しており、東京における香川県民の拠点となっている。
敷地内には、宿泊施設・レストラン、明治時代に建てられた歴史的建造物となっている一軒家があり、その一軒家が「ばんげ」として生まれ変わったのだ。

建物は、長い年月使われておらず、かなり損傷が激しい老朽化したものだったが、伝統的な意匠、明治時代のガラス窓、漆喰の壁、柱や梁などを活かしながら伝統美と現代のモダンデザインを融合再生させた。

コンセプトはオーナーと飲食店を食べ歩き、空間イメージやゾーニングプラン、料理のメニューを煮詰めました。
1階は、小上がりのカウンター席と高低で仕切られたテーブル席。
2階は、東京タワーを眺めながら落ち着けるラウンジ型に。

食材は、自然豊かな香川県ならではの特選素材を吟味し、ゲストの五感を満足させることができる「大人の隠れ家」に生まれ変わった。

雑誌「東京カレンダー」2007年6月号にも掲載された。

Before / After

改装前に中にあった生活道具を外に撤去
照明を灯すと、建物は一気に生命感を取り戻し、周囲の樹々とともに美しい陰影を描き出します。
昼間の古民家とは対照的に、夜の外観は“上質な静けさ”を纏った別世界へと変貌しました。
築100年の古民家は、長い空白の時間によって随所に傷みが広がっていました。しかしその中に置かれていたのは、ジョージ・ナカシマの名作チェア。
荒れた空間に、名家具がひっそりと残されていた光景は、過去と未来が交差するような強い印象を与えます。
古民家の壁に残る経年の跡を、照明が柔らかく拾い上げ、豊かな陰影として再解釈しました。
古さが欠点ではなく、空間の魅力として立ち上がる“光の設計”が店内を包み込みます。
経年で剥がれ落ちた珪藻土壁を、単に新しく塗り替えるのではなく、 古民家が積み重ねてきた表情を損なわないよう、慎重に質感を合わせながら仕上げています。
古さと新しさの境界が見えないように整えることが、この空間では最も難しく、そして最も重要な工程でした。
無垢材のカウンターの存在感と、背面棚の柔らかな光が呼応し合い、 素材そのものが持つ温度と深みを際立たせています。
バーコーナーが最も落ち着いた表情を見せる瞬間です。
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