業種/和食店

所在地/石川県金沢市

築25年のアパートが生んだ
金沢の夜景が望める和食店

もとは、小高い丘にあった築25年のごく普通のアパート。斜傾面に建つ、2階が玄関になっているメゾネットタイプの建物。
この何の変哲もない建物が、実は非常にすばらしい特徴を持っていた。

それは、金沢の夜景を一望できる贅沢な立地であったということ。
その景色と間取りを利用し、リノベーション設計・工事がスタートした。

長さ12m・厚さ11cmもの
無垢カウンター

カウンターから見える大きな窓の外には、犀川越しに金沢(百万石)の夜景が広がる。

長さ12mにもなる無垢のカウンターには厚さ11cmもの日本杉を使用し、独特の存在感と木の温もりを醸し出しています。カウンター上には大鉢に盛った様々なおばんざいを並べ、ディスプレイ。

また、カウンターに並ぶ椅子は、家具デザイナー・岩倉營利氏の作品。
バリのリゾートホテルの天井に使用している藁を張り詰めた天井で、懐かしさと温かみを演出。梁にはデザイン的な装飾を施した無垢材を使用し、重厚感ある空間を作り上げた。

建物の周りを囲むように群生する竹林を活かし、2面の壁を大きく抜いて窓にすることで、店内の空間に竹林の息吹を取り入れまる。
ライトアップされて幻想的に浮かび上がる竹林、風に揺れる竹の葉を眺め、「静」と「動」を感じながらお食事を楽しむことができる。

ロケーションを活かし取り入れることで、四季折々に店内の表情が変わる作りにこだわった。

着物の染めに使われる型紙をガラスにはさみ込んで作った玄関の引き戸は個性的な雰囲気を放ち、大型の花器はヤシの幹をくり抜いたもので、存在感あるオブジェとなっている。
突き当たりの漆喰の壁にはバリのアーティストが描いた絵画を飾った。カウンター後ろの格子部より地下の個室に降りることができる。

その他、各部屋はすべて使用する建材やカラー、デザインを変え、それぞれ違った個性を持つ個室に。
桐をフローリングとナチュラルな黄土色の漆喰で、温かみのある桐の木肌との優しい調和を。

また、深みのあるタモ材の色と漆喰の藍色が、凛としたメリハリのある空間を創り出している。

Before / After

素材の息づかい×時を重ねた建物の美しさ

外観を壊さず、既存の上から新しい壁をレイヤーのように重ねる工法を選択しました。ローコストでありながら、ファサード全体を劇的に変化させる“最小の介入で最大の効果”を目指した設計です。
ファサードに塀を重ねるように設計することで、外観に“間”と奥行きが生まれ、玄関まわりに凛とした格式が漂う佇まいになりました。
外の喧騒を断ち切り、玉響の世界へと導くための大切な装置です。
14メートルにおよぶ無垢の一枚板。
その圧巻の存在感を損なわないよう、職人たちが息を合わせて運び込みました。
カウンター越しに眺める景色は、この一枚板が放つ力強さと相まって、ここでしか味わえない豊かな時間を生み出します。
無垢のカウンターにおばんざいがそっと並び、訪れる人を迎える穏やかなひととき。窓の奥に滲むのは、繁華街・片町の光。 外の賑わいと、店内の静けさが対照的に響き合い、玉響ならではの豊かな夜が生まれまあいた。
すべてを解体し、残ったのは柱と梁だけ。
建物が本来もっていた骨格の美しさをあえて露わにし、その表情を読み取りながら、新しい光と素材を重ねて再構築しました。
古さではなく“深み”として立ち上がる空間が、玉響の静寂と温度をつくり出しています。
二つ目の個室は、壁と天井を和紙で包み込み、柔らかな陰影が漂う静かな空間に仕上げました。
桐材の床がほどよい温かさを与え、階上の個室とは異なる、しっとりと落ち着いた“和の深み”を感じさせる部屋です。
階段を降りるとユニットバスが置かれた寝室が広がっていた既存空間を、 いったんスケルトンまで解体。
暗く閉ざされていた場所を、玉響らしい落ち着いた個室として再生しました。
階段を降りた先は、ユニットバスのある古い寝室。
その空間を一度すべて壊して“ゼロ”に戻し、 構造だけを残して静寂の個室へと読み替えました。
最も不利だったスペースを、最も心やすらぐ場所へと転換しています。
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